地域ニュース

子育て母親を訪問支援 ボランティア活動「ホームスタート」 20100803

子育て母親を訪問支援

親子のつどいの広場で、ビジターの吉岡由美さん(左)と話す倉持みず絵さん(右)=熊本市城南町

 子育てで家に引きこもりがちになり、悩みを相談できる相手がいない母親は多い。子育て経験のあるボランティアが自宅を訪問して、話し相手になったり、家事や育児を一緒にしたりすることで母親の孤立解消を支援する動きが県内で始まっている。

 熊本市城南町では、母子保健推進員をしている母親グループが、昨年7月に「ポトフ《(隈部泰子代表、27人)という団体を立ち上げ、ベビーマッサージやお菓子作り教室を通じた「親育ち支援《をしている。

 隈部さん(51)らは、母子保健推進員として、小さい子どもがいる家庭を訪問していたが、訪問の目的や手段がはっきりせず「限界を感じていた《。

 そんな時、「ホームスタート《というボランティア活動を知った。1973年にイギリスで始まり、現在日本を含む21カ国で展開している。地域の事業運営主体に対して指導や助言、研修などを実施するホームスタート・ジャパン(東京)によると、国内でもNPOなど13団体が活動している。

 具体的には、未就学児のいる家庭からの要請で、オーガナイザーという調整役が家庭訪問し、親のニーズを聞き取る。研修を受けた子育て経験者(ビジター)が週に1回、計4回程度訪問し、母親の話をじっくり聴いたり、家事や育児をともに行ったりする。最後にオーガナイザーが再び訪問し、当初のニーズが満たされたかを確認して継続か終了を判断する。

 隈部さんらは2年前からホームスタートについての自主学習会を開き、4人がビジターに。試行的に訪問活動を実施し、これまで10世帯を訪れた。

 倉持みず絵さん(27)は、保健師を通じて訪問活動を知り、長女茜里ちゃん(1)が生後5カ月の時に初めて訪問を受けた。当時、倉持さんは周囲に知り合いもなく、日中は親子2人きりの生活。「子どものしぐさや遊び、睡眠リズムのことなど、ちょっとしたことを相談できる人がいなかった《と振り返る。

 倉持さんのビジターの吉岡由美さん(44)も2人の子育て中だ。茜里ちゃんが8カ月になるまで計7回の訪問があったが、倉持さんはすぐに吉岡さんとうち解け、2時間のおしゃべりタイムが心待ちだったという。

 吉岡さんの紹介で人形劇や「親子のつどいの広場《などにも参加。倉持さんは「いいきっかけになった。知り合いも増え、ほとんど毎日出かけている。悩みごとを共有できる友だちがいるのはうれしい《と喜ぶ。

 訪問を受けた母親たちからは「気軽に話せる《「気分転換になった《と好評。ビジターの原口美和子さん(53)は20数年前、見知らぬ土地での子育て中に孤独だった経験があったという。「特別な知識があるわけではないが、子育ての方法が分からない母親に対して、自分の経験から『大丈夫』『心配しなくていいよ』と言えることがある《と実感を込めて支援の必要性を訴える。

 ポトフは活動を広げようと、9月からビジター養成講座を開く。隈部さんは「お母さんたちの明るさを引き出す手助けができれば。地域の情報はそこに住んでいる人が一番よく知っている。ほかの地域でも活動が広がってほしい《と話している。(舞永淳子)